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RUKAの雑記ノート(現在休止中)

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現象の花の秘密の秘密はまだ謎のまま

現象の花の秘密私はこの20数年間、至高の音楽家「平沢 進」さんを人に紹介し続けてきた。
2005年に始めたこのブログにも、2003年のアルバム「BLUE LIMBO」(該当記事)、2006年の「白虎野」の発売時(該当記事)、2009年の「点呼する惑星」の発売時(該当記事)と、新しいアルバムを購入するたびに感想を書いてきた。

そして前作から3年、いよいよ今月の23日、12作目となるソロアルバムが発売された。タイトルは「現象の花の秘密」
前作のレビューではアルバムタイトルの「惑星」という言葉に戸惑いを感じたと書いたが、今回もタイトルを知って同じような戸惑いを感じた。「花?」「秘密?」
昭和歌謡によく登場したこの言葉。なんとなくチープなこの言葉。はたしてヒラサワ曲ではどのような世界観になるのだろう?

期待を込めつつ予約注文したこのCDが本日届いた。
開封の儀とまでは言わないが、Apple製品を開封する時以上に緊張する一瞬だ。平沢さんのCDは毎回そう。店から出荷されたものだとはわかっていても、まるで時空を超えて出現した神からの贈り物のような雰囲気さえ漂う。
そんな贈り物を今回もじっくり味わってみた。

ざっと聴いた感じでは、今回は寂しさ、不安、動揺、そんなイメージを感じさせる曲が多い。しかも今までのヒラサワ曲とはだいぶ毛色が違う。
どう違うのかは説明しづらいが、これまでの楽曲のような大自然的壮大さは影を潜め、身近な日常、しかもどこか懐かしい昭和の町並みのような雰囲気を感じた。

歌詞は相変わらず面白い、というより謎深い。変態音階も健在で、心地よいような気持ち悪いような、物語という器の中で酔う感覚がある。
前作までが壮大な映画を思わせる作品だったのに対して、こちらは芝居の舞台を見ているような感じ。
ある意味こじんまりというか規模が縮小した印象があるが、それはテーマが身近な花であるからであって、その世界観と謎は限りなく深い。

今回は「おおっ!」と驚かされる曲が少なく、全体的におとなしめな印象だ。人によっては物足りないと感じるかもしれない。
Lotusや庭師KINGのような力が湧き上がるような曲もなければ、コヨーテや夢見る機械のようなコミカルな曲もない。全体を通して薄暗さや寂しさが漂っている。

だがCDの帯にも書いてあるとおり、聴けば聴くほど謎めく花園であることは間違いない。私はタイトル曲である「現象の花の秘密」と10曲目の「空転G」がとくに気に入った。
しっとりと聴かせる曲が多い中で、この2曲は多少ポップでありながら歌詞にハッとさせられた。

もし、あの今敏監督が今も健在で、このアルバムをモチーフとして「千年女優」の続編を作ったとしたら、さぞや素晴らしいアニメ映画ができあがるに違いないと、そう思わせる世界観がこのアルバムにはある。
もちろん今日初めて聴いたばかりなので大部分は謎のままだが、これから何千回と聴くうちに少しずつ見えてくるであろうこの物語。飽きるヒマなど与えないところがヒラサワ曲の凄いところだ。

P-MODELが1995年に発表した「Welcome」という曲の歌詞の中に「Welcome to the Sphere 見せましょうか 現象の花の秘密を♪」という部分がある。
同じ意味で使われているとしたら、ヒラサワ曲の価値はこのブレのない思想の中にもあるのだろう。
今回もアストロ・ホーは健在だ。
by rukachas | 2012-11-25 23:37 | 音楽の話