
私が所有するフィルムはすべて35mmで、数はネガが6割、ポジ(リバーサル)が4割といったところ。
最近エプソンのフラットベッドスキャナ GT-X830を購入したので、とりあえずネガフィルムからスキャンしています。
ところが、すべてではないにしても、フィルムの劣化は思ったよりも進んでいました。
劣化の内容は主にこの3つ。
「カビによる腐食」
「経年変化による退色もしくは変色」
「フィルム自体のカール(反り)」
まずはカビですが、まるで絵の具が飛び散ったかのように黄色の斑点が現れていました。
しかしフィルムがカビた場合、基本的に有効な手立てはないそうです。
軽い汚れなら市販のフィルムクリーナー液で落とせるかもしれませんが、ガッチリ食い込んだカビは無理でしょう。
エタノールを使うという手もありますが、古いフィルムの場合は乳剤面に壊滅的なダメージを与えることもあります。
市販の液にしても水洗いにしても、そもそも私には大量のフィルムをひとつひとつクリーニングしている暇などないので、カビ落としはキッパリ諦めました。
そのままスキャンし、気に入ったコマだけ後からPhotoshopで修正することにします。
と言っても無数にある斑点ですから、ゴミ落とし以上に手間はかかりますが。
ネットで他の方の情報を見てみますと、蜘蛛の巣状の白いカビが出た人もいたりして、カビの現れ方にもいろいろあるようです。
私の場合は画面全体に黄色い斑点がまんべんなく散りばめられているタイプ。
画像をモノクロに変換すると多少は目立たなくなりますが、それでもかなり目障りです。
どのフィルムも同じ条件で保存していたのに、フィルムによってカビの多いもの、少ないもの、全く出ていないものがあります。
フィルムメーカーによる違いは見受けられず、どういう条件で差が出ているのかさっぱりわかりませんでした。
もうひとつの劣化は退色や変色。
プリントと同様、古いフィルムには付き物の困った現象です。
モノクロのプリントがセピア色になるのとは違い、カラーフィルムの退色は味わいなどまるでありません。
フィルムをスキャナにセットしてまずはプレビューを実行。
見てみると色合いがかなりおかしいコマがあります。
しかもコマごとに様子が違っていて、たとえば6コマのうち2コマ目は真っ青、4コマ目はさほど目立たないが5コマ目は真っ黄色、なんてことも。
これはコマごとに自動で色補正しているのでそうなるわけで、フィルム全体が一様に変色していることには違いありません。
そんなときはEPSON Scan(ドライバソフト)の「退色復元」をONにします。軽い退色ならこれだけである程度は自動補正してくれます。
空が緑色になっていたり肌が紫色になってしまうような古い写真でも、そこそこ見れるようになるのはかなり便利。
ところが退色を通り越して激しく変色しているフィルムの場合は自動では無理なようで、ONにすると余計におかしな色調になってしまうことがあります。
その場合は補正せずにスキャンするか、ある程度まで手動で調整してスキャンし、後からPhotoshop等で最終調整するしかなさそうです。
経年変化による退色や変色は、これはあくまでも私の場合ですが、フィルムメーカーによる差異がハッキリと見受けられました。
私が使っていたネガフィルムは6割がフジ、3割がコダック、残り1割が小西六(サクラカラー)とアグファ(ドイツのメーカー)。
フジフイルムを多用していたのは、当時もっとも信頼していたメーカーだったからです。
ところが今になってみると、変色がもっとも激しいのがフジでした。フィルム全体が目に見えて青くなっているものもありました。
小西六は多少変色があるものの、スキャナの退色復元で補正できるレベルです。
コダックとアグファはどのフィルムもほとんど変色していませんでした。
コダックはもともと他のフィルムに比べて多少ベースカラーが茶色っぽいんですが、今もほとんどその色を保っています。
当時、近所のスーパー(ダイエーだったかな?)で安いフィルムが売られていました。
パッケージは日本仕様でしたが、私はその中身がドイツのアグファ製だと知っていたので、日本製よりは長くはもたないだろうと思い、たまにスナップ用に買う程度でした。
ところがこうして数十年が経過してみると、なんと日本のフィルムのほうが劣化が酷いという有様。
「ドイツの写真フィルムはァァァ、世界一ィィィイイ!」だったわけです。(^^;)
といっても、アグファはとっくに写真事業から撤退しちゃいましたけど。
さて、最後はフィルムのカール(反り)についてですが、これが今回のフィルムスキャンを最もてこずらせました。
何しろフィルムホルダーにしっかりセットしても、どうしてもニュートンリングが発生してしまうんですから。
ニュートンリングとは、光の干渉によって起こる・・・とまぁ難しいことは置いといて、とにかくフィルムがスキャナのガラス面に接触すると、その部分にリング状の縞模様が現れる現象です。
これを防ぐためにはカールしたフィルムをできるだけ平らにするしかないんですが、付属のホルダーだけではこれが難しい。
無反射ガラスというガラスで挟み込んでスキャンしている方もいるようです。
しかしその場合はホルダーを使わないのでピント位置と傾きの調整が難しそう。また挟み込むという作業にもあまり時間を取られたくはない。
付属のホルダーだけでなんとかならないものかと考えた末、私はこのスキャナに付属していた「フィルムホルダーサポート」という黒いカードを利用しました。
ブローニーフィルムが反っているときに端を押さえるために使うプラスチック製のカードです。
私はこれをハサミでフィルムの幅と同じサイズに切り(35mm×25mmでOK)、それをフィルムの3コマ目か4コマ目の下に敷いてホルダーで挟み込みました。
これで反りが軽減され、ニュートンリングが発生するのを防ぐことができました。
ただしこのカードによって隠れてしまったコマは、あとからそのコマだけをスキャンしなおさなくてはなりません。その場合はそのコマの両隣に黒いカードを敷きます。
カードの厚さの分だけピント位置からズレそうな気もしますが、もともとUの字にカールしているせいかピンボケした印象はありません。
カールしていたフィルムは全体の2割ほどで、ほとんどがコダックのフィルムでした。
フジも一部がカールしていましたが、曲がり具合はコダックほどではありません。
コダックは色の変化が少ないところは良かったんですが、形の変化が激しいのが残念です。
結局のところ最も退色が少なく、フィルム自体もカールしていない、撮影当時と同じ状態を今も保っていたのはアグファのフィルムでした。
長期保存できるようにと多少奮発してでも買っていたフジのフィルムが、スーパーで売られていた安価なフィルムよりも経年変化しやすかったなんて皮肉なもんです。
その代わり画質そのもの(粒状性や発色など)は、アグファよりも上ですけどね。
綺麗なものは長くはもたない、これは写真フィルムにも言えることでした。(´ω`)